半導体株急落でNVIDIA失速、アップルが時価総額首位に返り咲き
AI マーケットサマリー
急激な半導体株の売りが幅広いリスクセンチメントを支配し、NVIDIAの約5%下落に加え、中国のDRAM自給自足が進展しているとの懸念や、大規模なAIインフラ投資(設備投資)が精査の対象となっていることを背景に、メモリ関連銘柄が大きく弱含んだ。NVIDIAのCDSスプレッド拡大は、同社のサプライヤー・投資家・保証人としての役割をめぐる信用リスクの観点を加えた。指数のまちまちな推移とFRBの利上げ確率上昇がリスクプレミアムをさらに押し上げ、地政学関連の見出しがマクロの不確実性を高止まりさせた。
影響度
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Tide Researchによると、原油急落は本来米株の追い風となるはずだった。WTIは1日で7.5%下落したが、半導体株の崩れがそれをかき消した。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は一時5%安、NVIDIAは約5%下落。アップルは相対的に買いが入り、時価総額でNVIDIAを上回って首位に戻った。
主要株価指数はまちまち。S&P500は0.02%高の7,413.18、ダウ工業株30種平均は0.51%高の52,210.08。ナスダック総合は0.18%安の24,932.081、ナスダック100は0.32%安の28,039.211。ラッセル2000は0.62%高の2,948.035。VIXは0.48%高の18.67。
大型テック7社は明暗が分かれた。アップルは1.17%高、マイクロソフトは1.94%高、アルファベット(Google A)は2.13%高。一方、NVIDIAは4.99%安、テスラは1.22%安、アマゾンは0.31%安、メタは0.22%安だった。アップルの時価総額は約4.93兆ドル、NVIDIAは4.78兆ドルに低下し、順位が入れ替わった。アップル株は年初来で24%上昇。設備投資を安定的に進める姿勢が、AI投資への不安が広がる局面で"逃避先"として意識された。
半導体は全般安。SOXは2.23%安の11,554.88で引け、TSMCの米ADRは1.03%安、AMDは5.17%安、ASMLは5%超下落した。とりわけメモリー関連の下げがきつく、マイクロンは2.25%安。SKハイニックスは一時10%安となり、米国でのIPO発行価格を下回って引けた。サンディスクは11%超下落し、キオクシアのADRも7%超下落。サンディスクは1カ月で時価総額が1,700億ドル減少した。
売りの直接の引き金は中国要因とみられる。同日、中国のDRAMメーカーCXMTが科創板に上場し、寄り付きで450%超急騰、時価総額が一時インテルを上回った。中国のDRAM自給化が想定以上のペースで進んでいるとの見方が広がった。続いて、サムスン電子がコスト削減のため中国メーカーからDRAMを調達する可能性を検討しているとの報道も出た。これらが米国上場のメモリー株のバリュエーションを支えてきた論拠を揺さぶった。
もっとも、機関投資家の多くは極端に悲観していない。マイクロン、SKハイニックス、サムスンが持つAI向けストレージの技術優位が短期で崩れるとは考えにくく、今回の下落は押し目買いの機会になるとの見方が優勢だ。
この日の例外は中国株だった。ナスダック・ゴールデン・チャイナ指数は2.51%高の6,257.87と、50日移動平均線に接近。小米(シャオミ)のADRは8.97%高、宝尊(Baozun)は12.8%高、EHangは7.5%高、ネットイースは3.5%高。拼多多、テンセント、アリババもそろって2%超上昇した。
NVIDIAの下げにはクレジット面の警戒も重なった。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドが1日で14bp拡大し、記録的な動きとなった。同社の"供給者""投資家""保証人"の役割が絡み合うビジネス構造に、市場の不安が強まっている。NVIDIAは最近、オハイオ州でのOpenAIデータセンタープロジェクトに対し最大2,500億ドルの資金調達保証を提供する計画を開示。SKグループとの5,000億ドル超の協業に続く大型コミットメントとなる。エコシステム内で自社が発注・投資・保証を同時に担う形が、どこかで歯車が狂えばリスクが連鎖的に伝播しかねないとの懸念を招いた。
ゴールドマン・サックスのクリス・ハッシー氏は、S&P500が過去2カ月にわたり伸び悩んだ背景を、AIインフラ投資が持続的な利益を生むかどうかへの懐疑に求め、原油や金利は二次的要因と位置づけた。実際、この日はAI関連株を除いたS&P500の残りが0.8%上昇し、指数全体を上回ったとされ、同氏の見立てを間接的に補強した。
地政学面では、米国とイランの停戦・対話を巡るシグナルが錯綜。トランプ氏は、米国とイランが"非常に真剣な交渉"を行っていると公言し、ホルムズ海峡の再開や核合意の再建が焦点と伝えられた。一方でイラン側は交渉の事実を否定し、紛争の開始・終了の時期を米国が一方的に決めることは認めないと主張した。
加えて、サウジアラムコのアブカイクの主要施設が攻撃を受けて火災が発生した可能性が指摘され、市場心理は引き締まった。中東で米軍の防空迎撃弾が急速に減耗していることを国防総省が懸念しているとの報道もあり、米国の追加的なエスカレーション余地を客観的に狭める要因とみられる。イスラエル首相はイラン問題を巡りワシントンへ向かい、トランプ氏は対応の具体策で相違が残ることを認めた。
金融政策では不確実性が一段と高まった。金利先物が示す今会合でのFRBの25bp利上げ確率は34%〜38%へ上昇し、1週間前の約13%から急変した。ブルームバーグのセバスチャン・ボイド氏は、当局者発言がタカ派に傾く一方で、短期のインフレ期待は1年以上ぶりの低水準、長期のインフレ期待も数カ月にわたり低下を続け、原油高がインフレに波及する"二次波及"がなお顕在化していない点を矛盾として挙げた。発言面では、ローガン氏やハーカー氏が相次いで利上げに言及し、理事ウォラー氏は米国のリスクが全面的にシフトしたと述べた。
決算シーズンは山場に入る。今週はS&P500構成企業のおよそ3分の1が決算を発表し、マイクロソフト、メタ、アマゾン、アップルも含まれる。モルガン・スタンレーのクリス・ラーキン氏は、地政学リスクと原油が今週の最大の不確実要因になり得るとし、"7社"が好決算でもAI投資への疑念が残れば株価が素直に反応しない可能性があると指摘した。
JPモルガンは戦術的に強気姿勢を維持。債券利回り低下、ドル安、企業業績の強さがS&P500の上値余地を支えるとみる一方、半導体のポジション過密とイラン情勢が最大のリスク要因だとした。