米下院民主党、暗号資産市場のSEC監督拡大法案を提案へ
米下院民主党は、暗号資産市場の包括的な制度法案を協議しているもようだ。マキシン・ウォーターズ下院議員が以前に示した投資家保護提案の一部を土台にする。ジャーナリストのエレノア・テレット氏が11月4日に伝えた内容では、SECの権限拡大、CFTCの権限縮小、政府倫理規制の追加が盛り込まれる。民主党スタッフと話した業界関係者の話を根拠とする。法案は未公表で、適用範囲、期限、執行規定は不明のまま。
9月15日、CLARITY法案の審議入りを巡るクローチャー(討論終結)動議は、60票の要件に対して49対50で否決された。共和党4人が審議入りに反対した。法案が再提出された場合、可決には別途採決が必要となる。
ウォーターズ氏の9ページにわたる修正第31号は2025年7月に提出された。小売向けデジタル資産取引所、ブローカー、カストディアンなどに、文書化された善意の詐欺事案を除き、出金・振替を24時間以内に完了させることを求めた。適格事業者にはSIPCへの加入を義務付け、他の事業者には顧客資産を保護する同等の枠組みへの資金拠出を求める内容だった。顧客資産は破産隔離された別口座で管理し、事業者が再担保、貸付、ステーキングを行う前に、顧客が撤回可能な明確な同意を与えることを要件とした。暗号学的に検証可能な準備金証明では、認可会計士による月次証明、年12回を求めた。最良執行義務では顧客注文を自己勘定注文より優先し、関連する自己勘定トレーダーやマーケットメーカーが同一プラットフォーム上で顧客と相対取引することを禁じた。24時間体制の人的サポートを5分以内に連絡可能とし、特定のセキュリティ侵害では48時間以内に顧客と規制当局へ通知することを求めた。ほかに、1ページの手数料開示、翌営業日決済、顧客のうち損失を抱えて資産を保有する割合の表示も盛り込んだ。対象事業者の規制違反による損失は債券、保険、保険付き信託で補償するが、あらゆる市場損失を対象とするものではなかった。施行は1年後、SECとCFTCの共同規則は最大18カ月後、小規模事業者はさらに1年後とする余地があった。2025年7月14日、下院規則委員会は本会議審議を認める動議を8対4で否決し、修正案の委員会審議は止まった。
議会調査局(CRS)が9月15日に公表した分析は、9月の妥協案における顧客資産保護、混同禁止、デジタル資産顧客に関する破産規定を説明した。取引所、ブローカー、ディーラーに対するCFTC登録、相場操縦・利益相反・顧客保護に対応する原則、銀行秘密法上の義務も指摘した。SECは投資契約の募集に関する権限を維持し、適格トークン発行体向けに最大2億ドルの開示付き免除を含めた。
上院議員のシンシア・ルミス、ジョン・ブーズマン、ティム・スコットの各氏は、9月14日の修正版が民主党側の要請による126の実質的変更を反映したと述べた。これは提出者側の集計であり、民主党の承認を意味しない。変更には、州司法長官による執行を伴うティリス・ガジェゴ方式に基づく倫理規定や、大規模な銀行預金流出時にステーブルコインの優遇策を制限する財務省権限が含まれた。倫理規定は、重大な財務上の利害を持つ一定の対象公務員に資産売却や盲目的信託の利用を求めたが、対象範囲と執行可能性を巡る不一致は残った。民主党が後継法案をまとめれば、9月の原則を、期限、報告義務、罰則を明記した執行可能な顧客権利に置き換える可能性がある。
CFTCはデリバティブを規制し、現物商品市場の詐欺や相場操縦には対応できるが、現物取引所の包括的な監督には立法が必要となる。9月の草案はこれを目指した。民主党案はSECの監督を仲介業者、発行体、顧客保護基準に広げるか、両機関の所管を分ける定義を変える可能性がある。取引所には登録、開示、注文処理、カストディに関する追加要件が課され、カストディアンには分別管理と検証の強化が求められる。小規模プラットフォームほど固定のコンプライアンス費用負担は大きくなる。
2026年3月のSEC・CFTC解釈はビットコインをデジタル商品と位置付ける。トークンの分類は取引所規制とは法的に別の問題だ。取引所でBTCを保有する顧客は出金期限、準備金確認、破産規定の影響を受ける。自己管理でBTCを保有する人は別のエクスポージャーを負う。PCAOBの投資家擁護担当スタッフは、通常の準備金証明報告が完全な監査ではなく、負債、所有権、借入資産を除外し得ると警告した。SIPCは、会員ブローカーであっても非証券の暗号資産は保護対象外としている。同等の保護枠組みには、別個の適格性、補償上限、資金調達ルールが必要になる。
顧客の暗号資産10億ドルを保有し、残高の15%を日次で移転できる完全裏付けの取引所を仮定する。20%の取り付け騒ぎでは5000万ドルの処理不足が生じる。同じ前提で40%の取り付け騒ぎなら処理不足は2億5000万ドルに達する。これは資産裏付けの不足ではなく、運用上の制約を示す。
後継法案は両院が同一文言を承認し、大統領署名か拒否権の覆しを経る必要がある。未解決の論点は、SECとCFTCの管轄、取引所のコンプライアンス費用、DeFiと開発者の扱い、ステーブルコイン優遇策に対する銀行の懸念、倫理規制の執行だ。各機関は既存の法定権限を使える。SECは8月の暗号資産規制(Regulation Crypto Assets)案、9月17日のイノベーション免除、10月1日のカストディ提案で動いた。カストディ提案への意見募集は12月7日締め切り。報酬規定と全現物市場の管轄は立法が必要だ。CFTCの現物市場監督と明確な顧客保護基準を組み合わせれば、当初のコンプライアンス費用は増えるが、当局指針より持続的な確実性が得られる。管轄と倫理を巡る不一致が続けば、顧客は現行法、州規則、個別プラットフォームの条件に依存する。大規模なカストディ破綻が起きれば、規制強化が加速し得る。次の立法論争は、取引所が出金を遅らせたり破綻したりした際に、一般投資家が執行可能な権利を得られるかどうかに、より大きく左右される可能性がある。