J.P.モルガン:世界の利上げ局面が再始動 株式は"利益"が下支え
AI マーケットサマリー
JPMorganは、先進国市場で同調した金融引き締めサイクル(FRB、日銀、ECBなど)が再開しつつあると主張するが、その引き締めは浅いものにとどまり、株式は主に企業利益により下支えされ続けると見込んでいる。主なリスクは、より広範な利上げサイクルに向けた再評価が起こり、長期ゾーンの利回りを押し上げて金融環境を引き締め、主導役が大型株のテクノロジー/コミュニケーション・サービスへと移る一方で、金利敏感セクターや小型株に圧力をかけることだ。
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Rita
世界的な金融引き締めの再加速が株式市場を押しつぶすのではないかとの警戒が強まる中、J.P.モルガンは「株価の錨は企業業績にある」との見方を示した。9月18日付(2026年)の「Global Market Strategy」で、先進国中銀が同時並行で引き締めに傾きつつあると指摘している。
報告書によれば、日本銀行は追加の引き締めに踏み切り、欧州中央銀行(ECB)、豪準備銀行(RBA)、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)、ノルウェー中央銀行(Norges Bank)と並んで利上げ組に加わった。年内はスウェーデン中銀(Riksbank)と英中銀(BOE)も追随する見通しで、先進国で据え置きを続けるのはカナダ中銀(BOC)のみとしている。
米国では、FRBのウォーシュ議長が会見で物価安定へのコミットメントを改めて強調した一方、追加のフォワードガイダンスは示さなかったと、J.P.モルガンのファビオ・バッシ氏はまとめた。ドット・プロット中央値は「年内あと1回の利上げ」を示し、2027年は据え置きが中心。ただし18人中8人は2027年の追加利上げを見込む。利下げは2028年と2029年にそれぞれ25bpずつと予測され、中立金利は3.25%へ引き上げられた。
J.P.モルガンはFRBが12月に25bp利上げすると想定。成長が底堅くインフレが粘着的というマクロの基準シナリオが続く場合、2027年初に「3回目」の利上げに踏み込むリスクもあるとみる。
■先進国で"同時利上げ"へ
FRBの動きは、弱い労働市場を受けて2025年末に行われた"保険的利下げ"を打ち消すものだと位置づけた。OISフォワードは概ね適正に織り込まれているとして、米国債利回り見通しを上方修正。2年債目標を4.70%、10年債目標を5.05%に引き上げた。
BOEは今週据え置いたが、中東紛争が長引けば引き締め余地があるとの姿勢を示した。J.P.モルガンはBOEが11月に25bp、さらに来年2月にも25bp利上げすると予想する。
日銀は25bp利上げを実施し、反対票が2票あった。J.P.モルガンは日銀が12月にも25bp追加利上げを行うと見込む。ECBについては、12月と2027年3月の利上げを想定。一方、市場は同期間で約70bpの引き締めを織り込んでいるという。
■株式は"金利"より"利益"
同行の中核シナリオは、利上げが浅い範囲にとどまる限り、株式は金利要因より業績主導で動きやすく、金利上昇の影響は限定的というもの。昨年の"保険的利下げ"が一部巻き戻されても、リスク資産は吸収可能とみる。
警戒点は、イールドカーブがより大きな利上げ局面を織り込み始めるか、長期金利が大きく上振れするかにある。長期の経験則として、米10年債利回りとS&P500のPERには「逆U字型」の関係があり、転換点は利益成長の環境で左右されると説明。市場コンセンサスの予想EPS成長率は20%超を維持し、S&P500は2027年EPSの約18倍で取引されている。成長見通しが実現すれば、過去のパターンではPERの支えが続き、10年債利回りが6%に近づいても株式は耐え得る可能性があるとしている。
金利上昇の直接的なファンダメンタルズへの打撃は緩やかだとも指摘。企業債務は固定金利・長期が中心で、金融株の収益性改善や潤沢な現金の運用収益増が逆風の一部を相殺している。より重要な二次的経路として、金融環境の引き締まりがAI投資サイクルを周辺的に減速させるか、金利上昇が所得階層間の支出格差を広げるかを挙げ、金利ショックを一律に想定するよりも、バランスシートの質とマージン耐性を重視すべきだとした。
■利上げ局面で大型テックが優位
J.P.モルガンはS&P500各セクターのベータを1年SOFRに対して分析。直近1カ月では、コミュニケーション・サービスがベータ+6%(R²=56%)、情報技術が+3%(R²=14%)、エネルギーが+7%(R²=52%)で、金利上昇局面で指数をアウトパフォームした。
ヘルスケアはベータ8%だがディフェンシブ性で相対的に底堅かった。資本財・サービス(Industrials)はベータ13%(R²=75%)、不動産(Real Estate)はベータ9%(R²=80%)で、金利感応度が高いアンダーパフォーム組と位置づけた。小型株はベータ8%(R²=81%)で大型株指数に対して3.4%下回った。大型株はベータがゼロ近傍で、金利変動の影響を受けにくい。同行は大型株、テクノロジー、コミュニケーション・サービスに強気スタンスを再確認している。
■原油:ブレント100ドル超は長続きしにくい
中東情勢の緊張でブレント原油は1バレル100–110ドルへ上昇し、5月末以降の75–100ドルのレンジを上抜けた。J.P.モルガンは、中東で"恒久的"な紛争が続く想定でも、ブレントが100ドル超で持続的に推移する可能性は低いとみる。
供給ショックは、開戦前の余剰、増産分、在庫により多くが相殺されており、均衡メカニズムは精製品価格上昇による需要破壊にあるという。商品戦略チームは、イラン関連の紛争終結について明確な基準シナリオを持てなくなったとしつつ、米国の経済的痛みの閾値は既に超えたものの、出口戦略は不透明と指摘。ブレント価格は推計フェアバリューを約90ドル上回っており、追加供給喪失への懸念に見合うリスクプレミアムが乗っているとしている。
■米中首脳会談:象徴性は大きいが実務のハードルは高い
J.P.モルガンによれば、中国の国家主席は9月23–25日にワシントンを訪問し、トランプ大統領との年内2回目の首脳会談が見込まれる。関係は関税問題から、通商・技術を巡る対立、制裁拡大、サプライチェーンのデカップリング、エネルギー安全保障へと焦点が広がった。訪問の象徴的意味合いは大きい一方、実質面での合意ハードルは高いとした。
同行の基準シナリオは、"管理されたデカップリング"の枠組みの中での戦略的妥協であり、包括的な"グランド・バーゲン"ではない。投資家は、中東での緊張緩和や海上安全保障協力と引き換えに、限定的な通商政策緩和を引き出すといった取引型の連動に発展する可能性を警戒している。仮に実現すれば、地政学リスクプレミアムの低下と信頼感改善を通じ、グローバル景気循環の圧力が一時的に和らぐ可能性がある。
■資産配分:株式と新興国をオーバーウェイト
J.P.モルガンはグローバル株式に前向きで、FRB利上げ局面でも大型株・高品質グロース・テクノロジーが上昇を主導すると予想する。利上げ幅が限定的でマクロ環境が底堅ければ、相場の裾野が広がる展開もあり得るとした。
債券では、米国とドイツの短期金利は中銀のベンチマーク対比で相対的に割安とみる一方、市場はなお追加利上げを織り込んでいる点を認めた。為替では、FRB見通しの再織り込みとウォーシュ議長のタカ派的発言を背景にドルが強含み、先進国通貨に対してさらに上値余地があるとの見方。新興国については、新興国通貨をオーバーウェイト、金利はニュートラル。クレジットはFRB利上げに対して最も耐性の高い資産クラスとし、欧州クレジットではハイイールドより投資適格を選好した。
世界の引き締め局面は再び動き出したが、J.P.モルガンは"浅いサイクル"にとどまるとみる。インフレ指標が想定以上に高止まりし、FRBがより攻撃的な利上げへ移行せざるを得なくなった場合でも、株式の"利益という錨"は機能し続けるのかが焦点となる。
免責事項
本稿は、第三者の証券会社リサーチ(J.P.モルガン、2026年9月18日)をもとに、Chaoxiang Researchが公開情報を加味して整理・解釈したもの。記載のレーティング、目標価格、利益予想などの判断は当該証券会社アナリストの見解であり、同社の立場のみを示す。Chaoxiang Researchの見解を反映するものではなく、投資助言ではない。市場にはリスクがあるため、投資判断は各自で行うこと。本稿は有価証券の売買の根拠として利用すべきではない。