米・イラン停戦で原油急落、金は反発 FOMC控え利上げ観測が上値抑制
米国とイランの軍事行動が突然停止したことを受け、27日(月)の国際市場はリスク要因の後退を織り込み、原油安・金高・株高が同時進行した。WTI原油は6%超下落して1バレル83.10ドルまで売られ、インフレ懸念がいったん和らいだ。一方、スポット金は寄り付きから40ドル超上昇し、1%高で一時1オンス4,096.63ドルを付け、足元は4,085ドル近辺(約0.8%高)で推移している。米株価指数先物も堅調で、S&P500先物は0.65%高、ナスダック先物は1.2%高となった。
停戦ムードが強まった背景として、国連米大使のマイク・ウォルツ氏は7月26日(日)、イランに対する空爆が2夜連続で行われなかったことを踏まえ、トランプ大統領が外交交渉の余地を確保する判断を下したと説明した。イラン軍も、米国が2夜連続で攻撃を停止したことを理由に、中東での米同盟国に対する報復攻撃を一時停止すると発表した。米国はこれに先立ち、イランへの攻撃を13日間継続していたが、金曜深夜以降に作戦が止まり、イラン側もテヘランが対応措置を停止したとしている。
ただし、情勢はなお流動的だ。両国は4月に停戦合意、6月には60日間の和平協議に向けた覚書を交わしていたものの、最近はホルムズ海峡の支配をめぐり衝突が再燃した。イラン軍報道官のモハマド・アクラム氏は、イランの行動は報復だと位置づけ、米国がとりわけ空爆を継続すれば事態はさらにエスカレートすると警告している。敵対再開後には海峡が再び閉鎖され、直近24時間で通航を試みた船舶6隻が拘束されたとの報道もある。
米国内でも見方が割れている。CNNは国防総省筋の話として対イラン軍事行動が"停止"したと伝え、ニューヨーク・タイムズは弾薬不足や地域紛争拡大リスクを踏まえて米国がエスカレーション計画を棚上げしたと報道した。これに対しウォルツ氏は、物資不足を強く否定し、必要な資源は十分にあるとしたうえで情報漏えいを批判した。
市場では、この停止判断がホルムズ海峡周辺の供給不安を直接的に後退させたとの受け止めが広がった。原油安はインフレ圧力を和らげ、FRBの利上げ圧力を軽減する材料ともなり、米ドル指数は一時0.23%安の101.22まで下落した。金は地政学リスクの一服と原油下落の組み合わせで買い戻しが入り、4,050ドル台を回復した。
一方、金の上値は金融政策見通しに左右されやすい。先週金曜のスポット金は0.1%高の4,053.29ドルで引け、週間では0.9%上昇した。独立系金属トレーダーのタイ・ウォン氏は、利回り上昇が続くなかでも金と銀はそれぞれ3,950ドル、55ドル近辺で下支えを得つつあると指摘。来週のFRBが据え置きを明確に示せば支援材料になるとの見方を示した。INGは、今年の高値から大きく調整した後の割安感やショートカバーが直近の強さを支えていると分析し、高原油と金利上昇が上値を抑えやすいとして、目先は4,000ドルが重要水準になるとみる。
Kitco Newsの週間調査では、ウォール街の見通しは短期的に弱気または不透明が多い一方、4,000ドルのサポートが再び機能したことで個人投資家側のセンチメントは改善した。Adrian Day Asset Managementのエイドリアン・デイ氏は慎重ながら前向きとしつつ、FRBがなお利上げに動く可能性があり、アジアの大国の景気減速と刺激策も絡むため"未解決"だと述べた。Asset Strategies Internationalのリッチ・チェカン氏は、原油が1バレル100ドルを超える局面と4,000ドルの強い下値支持という2要因を挙げ、支持線は維持される公算がある一方、中東緊張がインフレ懸念を残す限り金は大きく上昇しにくいとみる。FXTMのルークマン・オトゥヌガ氏も、ブレント原油が一時100ドルを超えたことが金に圧力を与えたとし、原油高がインフレ懸念を強め、利上げ観測・ドル高・米国債利回り上昇を通じて無利息資産である金の重しになり得ると警告した。
一方で強気見通しもある。Forexのジェームズ・スタンリー氏は、4,000ドル割れを試す局面で需要が確認されており、中央銀行、年金基金、ヘッジファンドなど長期志向の大口は好機と捉えると指摘。来週のFOMCを控え株式市場にも負荷の兆しがあるとして、パウエル議長は想定よりタカ派色を弱める可能性があるとみている。財政引き締めや均衡財政が当面見込みにくいことから、短期的な逆風があっても金の強気の論拠は崩れていないとも述べた。SIA Wealth Managementのコリン・シェジンスキー氏は中立で、金は大きく上昇して戦争関連の材料を相当織り込んだ一方、5,500ドルから4,000ドルへの下落でも懸念は完全には解消していないと分析。インフレ指標には遅行性があり、原油高が続けば1〜2カ月でインフレ再燃の可能性があるとして、ドル高が金の逆風になり得るとみる。目先は3〜6カ月の持ち合い局面が必要で、今週は3,960〜4,170ドルのレンジ推移を想定している。
最大の焦点は金融政策だ。FRBは水曜日に政策金利を発表し、市場はフェデラルファンド金利が3.50%〜3.75%で据え置かれるとの見方が優勢。ただ、今月の原油が27%上昇したことを受け、年末までに約44bpの利上げが織り込まれている。投資家はFOMC声明とパウエル議長会見から先行きの政策スタンスを探る構え。JPMorgan Chaseの米国チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は今週は据え置き予想としつつ、インフレが目標を上回り続けるなかで一部メンバーがタカ派姿勢から反対票を投じる可能性があると見込む。
CME FedWatchによると、7月会合で据え置きとなる確率は63.7%、累計25bp利上げは36.3%。9月時点では据え置き19.6%、累計25bpが55.2%、累計50bpが25.2%。12月時点では据え置き7.8%、累計25bpが30.9%、少なくとも50bpが61.5%で、年内に少なくとも1回利上げとなる確率は92.2%に達する。今週の据え置き観測が強くても、年内利上げ圧力はなお大きく、金の上昇余地を抑える要因になりやすい。
経済指標では、米国が6月耐久財受注、7月消費者信頼感指数、1-3月期GDP推定値、6月PCE価格指数、個人所得・個人支出、7月ミシガン大学消費者態度指数(確報)を公表する。英国中銀は木曜日に3.75%で据え置き見通し、日銀は金曜日に1%維持が予想され、ユーロ圏でも重要指標が相次ぐ。
総括すると、金は短期的に上値の重さが残る一方、長期の安全資産・インフレヘッジとしての位置づけは変わっていない。米・イランの軍事行動停止は市場に一時の猶予を与え、原油下落でインフレと供給不安が後退したことで金は4,000ドル台を回復、株価指数先物も持ち直した。ただ、停戦の持続性をめぐるイラン側の警戒、ホルムズ海峡を巡る再燃リスク、年内利上げ確率の高さが、金の上昇に明確な抵抗線として残る。短期は3,960〜4,170ドルのレンジが意識され、4,000ドルを維持できるかが次の方向性を左右しそうだ。
北京時間07:22時点のスポット金は1オンス4,085.69ドル。