スタンダードチャータード、ゾディア・カストディを買収へ 機関投資家向け暗号資産保管を拡大
スタンダードチャータードは、ゾディア・カストディの全株式を取得する契約に署名した。機関投資家向けの暗号資産カストディ事業を同行の直接保有下に置く。ロンドンに本拠を置く同行が10月21日に明らかにした。買収を実行するのは子会社のスタンダードチャータード・アイ・エイチ・リミテッド。対象にはシンガポール、香港、オーストラリア、アラブ首長国連邦、ルクセンブルクの規制対象事業が含まれる。
この契約は、ゾディアの株主と債券保有者が5月に受け入れた買収提案を前進させるものだ。取引の完了には規制当局の認可が必要となる。
同行はゾディアのカストディ業務を証券サービス部門に組み入れる。統合により、同部門が手掛ける従来の証券サービスとデジタル資産サービスに暗号資産の保管機能が加わる。機関投資家向けに単一のプラットフォームを提供できるようになる。銀行や資産運用会社がデジタル資産へのエクスポージャーを高めるなか、保管や決済などのサービス収入を上積みできる可能性がある。ただ、追加収益を実際に生むには、規制上の認可を取得し、ゾディアの事業を統合する必要がある。
証券サービス・デジタル資産グローバル責任者のイン・イン・タン氏は、今回の買収が同行のカストディ商品とグローバルな機関投資家向けサービスの幅を広げると述べた。
スタンダードチャータードはこれまでもデジタル資産事業の拡大に向けた投資を重ねてきた。今月に入り、リップルのステーブルコイン「RLUSD」のカストディサービスを開始。LMAXグループとの担保取引にRLUSDを組み込む計画も示した。アラブ首長国連邦ではビットコインとイーサリアムの機関投資家向け取引を拡大している。シンガポールでは、一部の暗号資産、ステーブルコイン、トークン化された実物資産を対象とするカストディサービスの計画を発表した。
一連の取り組みは、既存の銀行取引関係のなかに売買、カストディ、担保管理を束ねるもので、機関投資家が複数の業者に依存する状況を減らす可能性がある。
同行はゾディアのソフトウエア・プロフェッショナルサービス部門を新会社ゾディア・ソリューションズとして分離する。同行のベンチャー部門SCベンチャーズの下に設立された独立会社で、ブロックチェーン基盤の金融サービス導入や拡大を計画する金融機関にデジタル資産インフラを提供する。出資者にはノーザン・トラスト、NABベンチャーズ、SBIベンチャーズ、エミレーツNBDなどの金融機関が名を連ねる。スタンダードチャータードは顧客として関与を続ける。
この体制により同行は、規制対象のカストディ業務を従来の業務に統合しつつ、別個のフィンテック事業にも接点を持つことになる。ゾディア・ソリューションズのクレイグ・ペリン最高経営責任者(CEO)は、金融機関が試験的なデジタル資産プロジェクトから本格運用へと移行する動きが進んでいると指摘。その移行が専門インフラ事業者への需要を生んでいると語った。
分離の背景には、従来型金融機関の暗号資産事業拡大に伴う異なる商機がある。カストディ事業は機関投資家の資産を守ることで収益を得る。インフラ事業は、独自のプラットフォームを開発せずに同種のサービスを提供したい銀行に技術を売ることができる。
スタンダードチャータードのデジタル資産戦略には、取引インフラを手掛けるゾディア・マーケッツ、トークン化プラットフォームのリベアラも含まれる。これらの事業を通じ、同行はトークン化証券、売買、カストディ、技術サービスにまたがる機関投資家市場にアクセスする。